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線積分とは2

線積分とは、ある経路に沿って積分を行うことでした。
int_C f(x,y)ds

今回はこのdsについて、もう少し詳しく説明したいと思います。積分とは微小なものの足し合わせなのですが、この微小なものを表しているのがdsです。線積分の場合は、経路を細かく分けて行ったときの1区間がdsに対応しています。このように考えると、dsというのは向きを持ったベクトル量であることが分かります。なので本来d{bf s}=(dx,dy)と書ける量なのです。線積分中のdsはこのd{bf s}の大きさを表しており、
ds=|d{bf s}|=sqrt{dx^2+dy^2}
と書くことができます。

線積分とは、経路を区切って行った時に、ある点でのfの値掛けるds足すことの次の点でのfの値掛けるds…とやっていったものです。これはなんら特別なことではなく、普通の積分の時とやっていることは同じなのです。これまで学んできた積分は、x軸に沿った線積分と言い換えることができます。線積分と言うと、もっと一般のグニャグニャ曲がった経路に沿った積分も含まれています。

今回はスカラー値fに関する線積分を説明してきましたが、「線積分とは3」ではベクトル量の線積分について考えていきたいと思います。

線積分とは

ここでは線積分についてのイメージを話します。線積分とは”線”に沿って”積分”することです。積分というのは、高校数学のでもやったように、”微小なものの足し合わせ”です。この足し合わせを線に沿って行うのが、今回話す線積分です。

例えば点P_1P_2を考え、それらをつなぐ経路をなんでも良いので考えます。このような経路をよく”C“と表します。これはContourの略です。(Pathではありません。)Contourとは、等高線や輪郭といった意味を持ち、閉じた曲線に対して使われることが多いです。閉じた曲線というのは、始点と終点が一致しているような曲線のことです。一般の閉じていない曲線に対しても、Cを用いて表される慣習があります。

この経路Cに沿っての積分が、線積分です。線積分の値はどのような経路を辿るかに依って異なります。異なる経路CC'C''を考えた時、それぞれの曲線に沿っての積分の値が異なるということです。

具体例を考えます。今xy平面を考え、この平面上で関数F(x,y)=2x+yという関数を考えましょう。この関数を原点Oからある点Pまでの経路に沿って線積分することを考えます。ここでは具体的に点Pをxy平面上の(1,1)という点にとります。

経路として、次の2つの経路C_1C_2を考えます。
C_1 : 最初に原点からx軸に沿って点(1,0)まで進み、その後y方向に沿って点(1,1)まで進む経路。
C_2 : 最初に原点からy軸に沿って点(0,1)まで進み、その後x方向に沿って点(1,1)まで進む経路。

経路C_1に沿っての線積分は次のように書かれます。
int_{C_1}f(x,y)ds
今回の場合はx軸に沿って移動している間はds=dx、その後y方向に進んでいる間はds=dyとなるのですが、細かく書いているとややこしくなるので、象徴的に”ds“と書きます。この積分を経路に沿って具体的に書き下すと以下のようになります。
int_{C_1}f(x,y)ds=int^1_0 2x dx+int^1_0 (2+y)dy
ここでx方向に移動している間はy=0、y方向に移動している間はx=1となっていることに注意が必要です。さらに計算を進めると
int_{C_1}f(x,y)ds=int^1_0 2x dx+int^1_0 (2+y)dy=[x^2]^1_0+[2y+frac{1}{2}y^2]^1_0=frac{7}{2}
となります。これが経路C_1に沿っての線積分の結果です。

C_2に沿っての線積分も同様に考えられます。
int_{C_2}f(x,y)ds=int^1_0 y dy+int^1_0 (2x+1)dx=[frac{1}{2}y^2]^1_0+[x^2+x]^1_0=frac{5}{2}
これが経路C_2に沿っての線積分の結果です。このように始点と終点が一致していても、通る経路によって線積分の結果が異なってきます。なので線積分を書き表す際には、きちんとどのような経路における線積分かを指定する必要があります。