今回は、ベクトルの外積を、レビ・チビタの記号を用いて考えてみたいと思います。
まず下準備として、ベクトルの表記を確認しておきましょう。ベクトルを成分で書く際には、よくアルファベットの添字を用いますが、ここでは数字の添字を用います。
外積の第i成分は、レビ・チビタの記号を用いて次のように書くことができます。
ここではの第1成分を計算して確かめてみましょう。
が値を持つのはj=2、k=3の場合、あるいはj=3、k=2の場合なので
となります。レビ・チビタ記号の定義より、、なので最終的に
となり、きちんと外積の形になっていることが分かりました。
このようにレビ・チビタ記号を用いて外積を表しておくと、ややこしい計算をとてもすっきりと書くことができます。これを実感してもらうために具体例を考えていきましょう。ベクトル解析では3つのベクトルの外積を計算することがあるのですが、これを素直にやろうと思うとかなり面倒です。ここでレビ・チビタ記号の出番です。外積の第i成分をレビ・チビタ記号を用いて書き下してみましょう。
ここで注目するべきは、が2つ出てきている点と、その添字kについて和がとられている点です。レビ・チビタ記号のところでやった2つのの積が2つのクロネッカーのの積に入れ変わる公式
を思い出すと
と書けることが分かります。あとはクロネッカーのの定義に従って計算して行くだけです。
第1項目はとの内積、第2項目はとの内積を含んでおり、これを内積記号を用いて書くと
となります。これによってベクトル解析の公式
が導かれます。見た目はややこしいことをやっているように見えましたが、実際に手を動かしてみると、そこまで複雑ではありません。1つ1つ成分でばらして計算するよりは遥かに簡単です。
外積をレビ・チビタ記号を用いて書くことの有用性が少しでも分かって頂けたでしょうか?