今回はベクトル解析の際に非常に役に立つ”レビ・チビタの記号”というものについて説明します。レビ・チビタというのはイタリアの数学者です。
レビ・チビタの記号はで書かれます。例えば次のように書かれます。
この、、は1、2、3のどれかをとります。
レビ・チビタの記号の性質を挙げていきます。
レビ・チビタ記号は、、の中に同じものがあれば0になります。例えば
となります。この場合はとなっています。同様に()などとなります。
定義として
として、この添字の並びを遇置換(偶数回の置換を行ったもの)して得られるものは1、奇置換(奇数回の置換を行ったもの)して得られたものは-1となります。例えば
となります。この場合”213″という並びは、”123″という並びから”1″と”2″を置換を1回行うことで得られるため、レビ・チビタ記号は-1を返します。また
となります。これは”231″という並びは、”213″という並びから”1″と”3″の置換1回、あるいはもとの”123″という並びから数字の置換2回で得られます。そのためレビ・チビタ記号は1を返します。1か-1を瞬時に見極めるには、1から順に右に数字を読んだ時に”123″となれば1、”132″となってしまう時には-1と覚えればよいでしょう。この時は、一番右の数字を読んだ次には一番左の数字に移動します。
レビ・チビタ記号をベクトル解析で使う際には、2つのレビ・チビタ記号を掛けた形のものがよく用いられます。例えば次のような形です。
ここで縮約のルールで、2度出てきている添字は全ての場合を足し合わせています。つまり
です。この形のレビ・チビタ記号は、実はクロネッカーのデルタを用いて次のように書けてしまいます。
添字i、jは1つ目のから、l、mは2つ目のから来ています。添字の順番は覚えづらいかもしれませんが、これには実際に数字を当てはめて確かめるのが良いでしょう。重要なことは”2つの=2つのの差”という形です。
では実際に添字に数字を当てはめてみましょう。具体例として次のものを考えます。
kについては和をとりますが、レビ・チビタ記号定義より、この項はk=3の時のみ値を持ちます。つまり
となります。との形は共に、から添字の遇置換で得られるので値として1をとります。すなわち
となります。この例から先ほどの式の添字の順番を確かめることができます。今回の場合i=l=1、j=m=2であり、結果が+1となっていることから、の前の符号は+となり、その逆にの前の符号はーとなることが確認できます。
以上、すこしややこしい話になってしまいましたが、レビ・チビタ記号のこれらの特性は、ベクトル解析、特に外積の計算の際に非常に役に立ちます。